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2021年8月26日(シュヴィヤール「オートフィクティフ」)

4780 とうとう労働の日々のルーティンが始まれば、波をかき分けたり野山を駆け回ったりするのに精を出したこのヴァカンスのあとで、少し息をつくことができるだろう。 人間は傘を発明した。これがじつに利口で便利だというのは、なるほど水が落ちてくるときにはそうなのだが、今では水は上ってきているのだよ、坊や。 すべての花が、君が来たことを言い立てている。 -- 「 オートフィクティフ(L'Autofictif) 」は作家のエリック・シュヴィヤール(Éric Chevillard)によるブログで、2007年9月から現在に至るまで、ほぼ毎日更新されています。全アーカイヴが毎年1月に L'Arbre vengeur 社より刊行。

2011年8月19日(シュヴィヤール「オートフィクティフ」)

1321 両親が庭の奥側の土地を手放して庭が二つに分割されたとき、私は学生でもうここには住んでいなかった。生垣が植えられ、新しい隣人たちは古い木々を切り倒し自分たちの家を建てた。それから両親は退職するときになって残った土地を手放し、街に移り住んだのだった。私がこの庭のことを思い起こすと、ここ数年に変化したものは形を保っていられなくなる。生垣は引っこ抜かれ、古い木々は起き上がり、おののく隣人たちはどうしていきなり壁にひびが入ったのか理解できない。そしてついに屋根が彼らの頭上に崩れ落ちるのだった。それにしたって忠告しておくべきだっただろうかーー彼らが家を建てたのは、いつ噴火するとも知れない不安定な土地、地下深くから地表に至るまで、記憶の地体構造による予測不可能な法に支配された土地なのだと。 ひと吹きの突風が、青空を丸ごとさらっていった。 曲馬師の女はあるとき落馬し 騎手の男は太った しかしショーウィンドウのなか蝿は踊る 二人の馬肉専門肉屋で - 「 オートフィクティフ(L'Autofictif) 」は作家のエリック・シュヴィヤール(Éric Chevillard)によるブログで、2007年9月から現在に至るまで、ほぼ毎日更新されています。全アーカイヴが毎年1月に L'Arbre vengeur 社より刊行。 翻訳:稲田紘子

2025年8月12日(シュヴィヤール「オートフィクティフ」)

5960 私は間違っていた、後悔している。いつも夏になると私の足を第二の皮膚のように包んでくれた、しなやかだが丈夫な布のサンダルを、革のサンダルに取り替えたいと思うだなんて。そうすれば ーー なんと浅はかな! ーー 何度も履くうちに生地が伸びて脱げてしまうという、布サンダル唯一の不便から解放されるだろうなどと考えていたのだ。 たしかにこの点において、私の見立ては正しかった。当て布や補強材をあちこち縫い込んだ革のサンダルは、伸びない。いやもう全く。これっぽっちも、1ミリだって伸びないのである。そして私の足はその中で窒息寸前、かかとは擦りむけ、つま先は腫れ上がり、7月14日革命記念日の舞踏会が行われる市庁舎前広場よりもきらきらと輝く水ぶくれで覆われた。もっとも私が踊ることはない。一歩歩くのだって苦痛だからである。 一歩踏み出すごとに叫ばずにはいられない。後悔。もう同じことは繰り返すまい。この傷が治り次第また、しなやかで丈夫な布のサンダルに足を滑り込ませるつもりだ。そして、それが再び伸びはじめたとき、私は自分が許されたのを知るだろう。 - 「 オートフィクティフ(L'Autofictif) 」は作家のエリック・シュヴィヤール(Éric Chevillard)によるブログで、2007年9月から現在に至るまで、ほぼ毎日更新されています。全アーカイヴが毎年1月に L'Arbre vengeur 社より刊行。 翻訳:稲田紘子

2010年8月5日(シュヴィヤール「オートフィクティフ」)

969 はるか先のことだがいつか必ず訪れる、もはや幼年時代のことしか思い出せなくなるその日を見越して、子どもたちに宝くじの遊び方、ブリッジやドミノのルール、それから老年医療の基礎知識をいくらか教えておくのがよいだろう。 うとうとするきみの頭がきみの父の肩にもたれかかるやいなや、もうきみの肩に、きみの子どものうとうとする頭がもたれかかっている。こうした全てはじつにあっけなく、まどろみの靄のなかで体験されるにすぎない。けれどもこれらが、われわれのもっとも美しい感覚のうちのふたつなのだ。 生まれたばかりの子どもの泣き声は、海鳥の鳴き声に似ている。ところで赤ちゃんに塗られる痒み止めの軟膏は、非常に強い魚のにおいを放つ。だからごめんねスジ、わるいけどきみをイワシ漁船のあとを飛んでゆく若いカモメと見紛うときがあるんだ。 - 「 オートフィクティフ(L'Autofictif) 」は作家のエリック・シュヴィヤール(Éric Chevillard)によるブログで、2007年9月から現在に至るまで、ほぼ毎日更新されています。全アーカイヴが毎年1月に L'Arbre vengeur 社より刊行。 翻訳:稲田紘子